医療の「原点」への回帰による「革新」
〜ソクラテス、プラトン、再びヒポクラテス〜

医療も現代の多くの他領域と同様に「伝統」と「革新」の両輪で発展している事、そして従来的な意味での医療における「革新」は、細分化された様々な専門分野で非常に多くの医師や科学者、医療関係者が様々な病気を研究し、新発見を見出し、新技術を開発し、学会・論文などで発表し、その成果を新しい治療法として実用化する事で実現されている事を述べました。そしてその上で、現代に生きる医師である私たちが、「今後本当に注力していくべき望ましい革新とは何か?」と問うて前回の結びとしました。

2017年最初となる、本連載記事のスタートとして、今回からいわゆる「予防医学」、「未病」に関しての考察を始めたいと思います。予防医学と未病を語っていく上で、私なりのアプローチとして、医療、医学における「原点/伝統への回帰」による「革新」、と いう事について、先人の発言、会話の引用から始めていきます。

(プラトンの記したソクラテスとグウラコンの会話)

ソクラテスは言う。

「国というものは簡素であるべきなんだ。人々は大麦や小麦、それに塩やオリーブ、チーズなどの薬味や前菜、そして田舎料理のゆでたタマネギやキャベツ、デザートにはイチジクやエンドウマメ、豆類、炒ったマートル(銀梅花)の実やブナの実など、それに適量のワインなどを常食にすべきだろうね。こうすれば人々は、穏やかで無病息災の日々を過ごし、おそらく高齢になるまで生きられるだろう」

しかし、このソクラテスの発言に対して、グラウコンは次のように反論した。

「このような食事はブタのような人間が住む国にふさわしいものであって、都会に住む人間はもっと文化的な生活をすべきだね。ソファーに体を横たえ、いつもステキな料理やデザートが盛られたモダンな食事をすべきなんだ」

すなわち都会人は、肉を食べて贅沢に暮らすべきだというのだ。

そこでソクラテスが答える。

「もし君が病気で苦しむ人々でいっぱいの都市を想像してみろと言うなら、君の言っている事はよくわかる。だが、そうした食べ物を食べるには、あらゆる種類の家畜も大量に必要になるね」

「もちろんだよ」

「このような生活をしていたら、以前の食事をしていたときより、医者の世話になることがもっと増えるんじゃないかな」

「増えるだろうね」

「贅沢な食事は家畜を育てるのに余計な土地が必要となって、土地が不足してしまうよ」

土地の不足は隣国から土地を奪う方向に向かい、これがやがて暴力や戦争を引き起こすことになる。結果として裁判の必要性が出てくる。

ソクラテスは次のように続ける。

「放蕩と病気が市内に溢れてくると、法廷や医院が数多く必要にならないだろうか。たくさんの人、しかも良家の人でさえ、法律家や医者をめざすようになると、法律や医術ばかりが幅を利かせるようにならないだろうか。言い換えると、病人や病気、法律家や医者の多い贅沢な都市が普通になってしまうだろう」(以上、「The china study」、T・コリン・キャンベル、トーマス・M・キャンベル 著、松田麻美子 訳、グスコー出版 2016年より引用)

私たちの体は、何でできているのでしょうか?言い換えれば、私たちの体の材料は、どこから供給されるのでしょうか?

少し考えればわかる通り、食べるものでできている、食物を構成している成分からできている、と言えると思います。食物から得られる成分から、体が消化・吸収・合成のプロセスを行い、その自らの体を再構築していくという事になります。

引き続き次回も「予防医学」、「栄養学」、「食事・栄養に関わる知識の集積」などを巡って論じていきたいと思います。

お話頂いた方  院長 鈴木高佳さん
鎌倉小町通り眼科
鎌倉市小町1-6-8 リアスコビル1F
☎0467-61-2623
鎌倉小町通り眼科HP

湘南藤沢鈴木眼科内科クリニック
藤沢市亀井野259-1
☎0466-54-7850
湘南藤沢鈴木眼科内科クリニックHP

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