よくある相続の失敗事例

平成27年1月1日より、相続税の基礎控除が4割引き下げとなり、税率も一部で引き上げとなるなど、相続税がより身近なものとなってきました。相続は一生の中で何度も経験するものではありませんが、「知らなかった」では後々大きなトラブルに発展しかねません。そこで、今回相続の現場でよく目にする失敗事例を取り上げてみたいと思います。

争族についての失敗

「家族円満なので相続争いなんて起きるはずがない…」

相続は家庭内で最もトラブルに発展しやすい問題と言っても過言ではありません。現金や預金であれば平等に分けることも可能ですが、不動産は平等な分割が困難であるだけにトラブルのもととなりがちです。遺産分割の方法は法律で定められていますが、相続人が納得すればどのように分けても構いません。また、遺産は故人が築き上げたものであるが故に、遺産分割にあたっては、故人の意志、すなわち遺言が最も尊重されます。相続発生後に家庭内で無用のトラブルが発生することを避けるためにも遺言は極めて有効なものといえます。遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があり、中でも公証人役場で作成する公正証書遺言が最も確実であると言えるでしょう。自筆証書遺言は費用もかからず簡単に書くことができますが、形式不備の場合には無効となる可能性もあり、家庭裁判所での検認も必要となります。

相続対策についての失敗

「相続対策のために賃貸住宅を建てたけれど…」

相続対策として一般に行われていることとして、未利用の土地に賃貸住宅を建設するというものがあります。これは相続税における土地の評価において、未利用の土地に賃貸住宅を建てた方が、評価額を引き下げることができるという仕組みを利用したものです。しかし、視点を変えると、これからの日本は本格的な少子高齢・人口減少社会を迎えることとなり、土地余り・家余りが顕著となり、賃貸住宅市場においても借り手が減少し供給過多になると見込まれます。国においても「空き家対策特別措置法」が施行され、中古住宅を活用しようとするような動きも出ています。これからの賃貸住宅は、空室率の上昇や家賃の低下などますます競争環境が激化していくものと予想されます。したがって、土地保有者は、相続対策ばかりに目を向けるのではなく、賃貸住宅市場の動向も意識したうえでの対策が必要となってきます。

生前贈与についての失敗

「毎年子供に金銭を贈与して財産を減らしてる…」

1年に110万円の基礎控除を利用した贈与は、長期的かつ計画的に行えば、相続対策としては非常に有効なものと言えます。親族の名義で銀行口座を開設して、そこに毎年入金するというのはよくあるケースではないでしょうか。しかし、ここで注意しなければいけないのが、いわゆる「名義預金」との関連です。名義預金とは、形式的には他人の名義で預金しているものの、実質的には贈与した者の預金と認識され、他人の名義を単に借りているに過ぎない預金とみなされるものです。税務調査においても、名義預金は問題となりやすいので、名義預金と認定されないためにも贈与契約を有効に成立させることが大切です。贈与契約は双方の合意があって初めて成立するものであり、具体的には、①贈与の証拠(贈与契約書の作成や贈与税申告)を残す、②贈与を受けた人が通帳や印鑑を保管する、③贈与を受けた人が貰った預金の一部を実際に使う、などが有効です。

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TAO税理士法人
代表社員 公認会計士・税理士
土屋 善敬

職員数 25名 (うち公認会計士3名、税理士4名)
業務内容 税務会計顧問、事業承継支援、医業 支援、相続税申告業務、相続支援他
URL http://www.tao.or.jp
MAIL tao@tao.or.jp

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